夜半に雨は上がったようで、
テン場(阿曽原温泉小屋)ではAM3:00には隣で
バサバサとテントの雨を払う音が。
自分も早く出発予定だったので、
ごそごそとテントから這い出て、頭上の明るい月と
星空を確認してこの日の好天を確信。
いそいそと撤収し、AM5:00に出発。
まだ真っ暗な中お世話になった小屋をあとにする。
小屋を出てからしばらくはまたガレガレの登山道。
しかも到着時と反対で今度は上り。
朝からきっついなーとぶつくさいいながら進む。
楽しみにしていた下の廊下に
ついに行くことができる。
崖道は前日の水平歩道で少し経験はした。
少しは役立つだろうか...
どきどき....
この開通期間限定の登山道、下の廊下は実は
この日程の時点では公式に開通アナウンスされていませんでした。
阿曽原温泉小屋サイトの情報で、
全ての整備は終わっていないけど、気をつければ通行できる
とあっただけ。
でも開通を今か今かと数週間待ち望んだ身からすれば
それだけあれば十分と突っ込んできたのです。
そして周りにいる方みなさんそう(^^;
胸はやらせながら小屋を出て最初に着いたのは
関電人見平宿舎。
このすぐ先の仙人谷ダム勤務の方の宿舎でしょうか。
窓から風呂のあかりや調理場、自販機が見えて、
お願い入れてという気分になる。
ここで明るくなったことだし朝ごはん。
ここからコースは他にもおそらく例がない、
ダムの施設内を通ります。
ダムの名前は仙人谷ダム。
そしてそれが下の廊下に進む前楽しみにしていた
ポイント。
なぜならここは、下の廊下に来る前後に読む人は
多いであろう予習復習に最適の書、
「高熱隧道」のメインの舞台だからです。
ダムを建築するための
資材運搬のためのトンネルを掘る人々の実話を元にしていて、
ノンフィクション小説に仕立て上げられているので、
ここに興味があるなら一気に読み進めます。
このあたりには最高温度165℃にもなる高熱の岩盤が
あって、それを掘り進むために幾人もの犠牲者をだしながら
ついに貫通させるお話。
読み終わってちょっと怖くなるほど迫真の物語だったけど、
まさにその場所がここなんです。
熊よけの門を開けて入ります。
最初はヒンヤリとしたコンクリートの建物。
そこから登山者向けの案内図に従って中を進みます。
中には資材運搬のための鉄道の線路が。
うおお!このあたりかあ!
と自身の胸中温度は上がり始め、
ある角を曲がると、突然の熱風が!
うわ!ここか!こんな温度の中を掘ったのか!
と自身の胸中温度は最高180℃くらいに達する(^^;
ほんとに施設内に高温地帯があって、
カメラのレンズも曇ってしまうので
撮影できませんでした...
いや、小説の舞台を生で見れただけで感激の瞬間でした。
そしてこのダムの施設内は少しわかりにくく、
下手すると迷路っぽくもありますが、最終的にこの扉に
たどり着けば正解です。
ここからダムの上に出るんです。
流れ出る水量はものすごく、
大迫力!
かなり遠いですがこのダムから剱岳方面へ
向かうというコースもあります。
いや、ここは2日目のっけから大層なアドベンチャー気分でした♪
でも先を急ぐので、
ダムから降りて、下の廊下方面の林道を進みます。
そして見えてくるのは山中にある施設から
電気が送られる送電口。
よく作ったよねこんな険しいところに...
ああ、また胸中温度が上がっていく...(^^;
いやいや、ここは冷やして冷やして。
東谷吊橋が待ってますから。
これはねえ、崖道よりかわかったですよ。
両サイドフリーですからね...
慎重に渡ります。
渡ったら崖道の始まりです。
うん、前日の水平歩道よりは厳しそう。
頭上も注意しないとごつごつぶつける。
いつもなんですが絶景は必ずしも進行方向ばかりに
あるとは限らず、振り返ったときにあったります。
ここはおそらく山雑誌PEAKS2017年9月号の表紙に使われたとこですね。
むー、さすがにこの崖道を自撮りの制限時間内で
走ることはこわくてできぬ...
むむ無念...
ここあたりから峡谷ならではの景勝地が続きます。
これは
「S字峡」
黒部ブルーの鮮やかな水が見事に蛇行する
そうそうたる眺めです。
そしてこのあたりから黒部が本気出してきます。
一層シリアスになっていく崖道。
ここに丸太をよく渡したなって道。
ここに至っては丸太一本?!
もちろん猿や熊じゃないので丸太一本は渡れないので、
壁側のボルトをたよりに這って渡りました。
そうです。このあたりはまだ整備が済んでないのです。
これが冒頭で説明した公式に開通していない理由です。
なんでも公式開通表明は関電の方が全コース整備終了後に
一度通って、よし大丈夫となってかららしいです。
この分だと2017年は10月中旬以降になりそうですね。
崖道にはこういう鋭角に曲がった先が見えないという
足をすくませるコーナーが何度も出てきます。
ここはそーっと覗いて
対抗から人が来てないか確かめてから進みます。
でもこの類のコーナーを越えたらたいてい絶景があります(^^
こういうのに慣れてくると緊張の中にも
楽しみがでてききます♪
おっとここは十字峡の手前、完全に崩落したままです...
ここも足場を確実に捉えて
残ったボルトとロープを伝ってクリア。
進みますよー!
しかし黒部はますます本気出してきます。
これどこ歩くかわかります?(^^;
そしてなんとか着きました。
「十字峡」です。
ここはその名の通り、川の流れが十字にクロスするところ。
上にはまた吊橋が...
今度はさっきより左右の鉄のロープが低い!
はい!ではいきますよ、吊橋の上からの決死の激流撮影三連発!
上流!すげえ!
下流!迫力!
足元!高けえ!
撮影終わったらいそいそと渡り、ほっとしたのもつかの間、
目前に現れた崖道はこれ...
おう...
ここで悟りました。
水平歩道は確かに下の廊下のウォーミングアップにはなったけど
全く別物だと...
この先2箇所ほど、崖道の上から水が流れ落ちてて、
濡れないと進めないところもあります。
水量あるので一瞬びしょびしょになります。
もしシェルを着てるならそのポイントが過ぎるまで
脱がないのが得策ですね。
さらに進むと全く足場なんてなさそうな岩肌にかかる丸太橋。
これ一本目どうやってかけたのだろう?
職人さんの仕事ってもはや芸術ですよね?
日も昇ってきて、人の往来が増えてきます。
黒部ダム側から来る方。
黒部ダムへ向かう方。
ふと目線を遠くに離すと迫ってくる峡谷。
非日常で他にたとえようがない道が続きます。
これが下の廊下なんだ...
えらいとこだここ...
とわかった気でいた私に
「何言ってんだ?ここからだよ」
と迫ってきたのが下の廊下での最大のハイライト、
「白竜峡」です。
最初この看板見つけたときには
地図と照らし合わせてああ、ここまできたかー
ぐらいにしか思ってなかったのですが、
顔を上げて絶句。
黒部の真の本気はここにありました...
一見するにこれ以上ない絶景ですが、
ここの端を進まねばならないのです。
ここを。
白竜峡パねぇ!
しかも自分が進むだけならまだしも
対抗で人がやってくる!
ちょうど朝に黒部ダムを出発した方との
すれ違い地点がここになってしまったようです。
ワンサカ向こうからやってくる。
ある程度向かってくる人を見ながら、
自分の退避場所も探しまったく気の抜けない時間。
川に目を移せばそれはすばらしい景観で
撮影しまくりたいけど、後に追われて、前からやってきて
ままならず...
ここは全コース中最も緊張しましたね。
でも同時にもっともエキサイトした瞬間でもありました(^^
これが下の廊下なんだ...
さらに進むとコースの先に巨大な雪塊が!
デカイ!
あ、これが阿曽原温泉小屋のサイトに記載のあったところか。
この雪塊のせいでコースが通れないので
上を巻きます。
梯子で登って、
ここが雪塊の上、山側を見ると白馬のような雪渓。
いや、これ今年はもう溶けないのじゃないの?
反対側は15mほど懸垂下降よろしくロープで降ります。
この時期にこれだけ雪塊が残ってるのだから
黒部ってすごいですよねー。
そして渓谷ではなくてまさに峡谷。
この川と山と谷と空の見事なコントラスト!
来て良かったですよほんとに。
ここまで見事な峡谷は見たことなかった。
他にもあるのかなあ...
下の廊下の核心部、白竜峡を過ぎると、
あとはゴールの黒部ダムまで、ひたすら登山道が続きます。
ずっと川沿いは進めないので時折、巻きのアップダウンが出てきます。
この道が長い!とても長い!きつい!
白竜峡で体力も元気もテンションも
使い果たしてしまったので、
ほぼゾンビウォーク...
ここはせめて気だけでも備えておくべきでした。
トレイルレースでいうと、
ゴール手前の距離稼ぎの林道、
標高稼ぎの余計な一山みたいな感じです(^^;
なんとか耐えて、内臓助谷出合で反対側に渡ったら、
さらに登山道を最後進んでようやくゴールの黒部ダム。
下の廊下長ーーーい!
結局到着は16:00。
なんと11時間もかかりました。
いくら途中ですれ違い渋滞があった、
写真撮ってたとはいえ、CTを約2時間オーバーは
いただけないですよねえ(^^;
水平歩道は5時間でまあまあだったんですけどねえ(^^;
最後は疲れ果てましたが、
緊張タイムも含めていままでにない山行を存分に楽しめました。
下の廊下、唯一無二のところです。
今回最初に水平歩道を通ったのはやはり役立ちました。
崖道の概要を先につかめたので。
後半はなれもあって、少々の丸太橋だと意識しないで
通過できてましたしね。
水平歩道を先に持ってきたほうが
小屋まで近いし、慣れることもできるしでオススメではと思います。
テン泊なら場所確保は早い者勝ちなんでなおさらですね。
紅葉はこの日程だと全然でした。
最盛期は10月中旬以降~月末でしょうね。
ただ混雑具合も格段にあがるはずなので、
小屋での宿泊もコース上のすれ違いや追い抜き追い抜かれも
かなり注意要かと。
命あってのお楽しみです。
注意点は水平歩道と同じで、
さらにそれを研ぎ澄ませる必要があるのが下の廊下だと思います。
いままでの山行はひたすらに快適な稜線のみ
追いかけてきましたが(それも晴れを狙って)、
こんな特殊でスリリングな山行もあるのかと、
一切稜線に出ずに、ピークひとつも踏まずにこんなに満足できる
山行があるのかと目からウロコです。
北アルプスは深いですねえ。
まだまだ楽しみ詰まってそう。
ありがとう黒部峡谷、
またね♪
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